精読とは、英文の一つひとつを、綿密に分析しながら読み進めていく学習法のことです。言い換えるなら、実際に生きた英文を見て、自分が知っている知識がどのように活用されているのかを知るための勉強です。
リーディングの基礎になるものは、単語と文法です。理屈だけを見れば、単語と文法さえわかれば、すべての文章は正確に理解できるはずです。
しかし、それらを知っていることと、実際に書かれた英文の中に、それらの要素を正確に見つけ出すことは別です。だからこそ、その差を詰めるために、精読が必要になってくるのです。
テキストに書かれている文法や単語の知識とは、例えるなら市場に並んだ魚です。きれいに分類されて、おとなしく売り場に並んで、名前のラベルがついています。だから誰が見ても何が何かすぐにわかります。でも、本当に大切なことは、それが海で泳いでいるときに、どういう姿をしているかを知ることです。

■多読との関係
精読では、読めなかった英文が読めるようになることを目的とします。一方で多読では、読めるようになった英文を、より早く処理できるようにすることを目的とします。
多読とは違い、英文を読む量やスピードよりも、英文に対する正確な理解を重視することが特徴です。
精読と対になる多読もまた、英語学習において必須ではありますが、精読なくして多読は成り立ちません。正確な読解力のない人が多読をすれば、それは誤読を繰り返すことになるからです。精読を通じて英文解釈の土台を作り上げた上で、大量の英文を読み込むようにしてください。
■長文問題集を解くのとは違う
また、英語の長文問題集を解くことと、精読をすることはイコールではありません。長文問題集の欠点は、例え問題文を正確に読めていなくとも、問題は解けてしまうことです。特に、TOEICや英検などの、選択式の長文問題はその典型です。
精読をする際は、問題が解けたかどうかではなく、「文章が読めたか」を基準にするようにしましょう。
■安易な速読はしない
速く読もうが、遅く読もうが、「正確に英文を理解すること」をせずに英文を読むことは不可能です。
精読とは、ゆっくりでもいいから、英文を正確に読む訓練です。難しい英文は速く読めないで当たり前。それらの英文をどうやって分析しながら読めばいいのかを学ぶのがこの精読です。
決して、ゆっくり精読ができない文章で、「速読」などしないようにしてください。最近はTOEICなどの影響もあってか、速読が注目されてはいます。しかし、ゆっくりですら読めない英文を速読しようとしたら、それは単に「雑に読む」ことと大差ありません。
まずは精読で「英文を読む」という、最も基本的なことを抑えてください。

精読のやり方
①まずは速読してみる。
精読をする教材を決めたら、まずは一回速読をしてみてください。
この段階では、トレーニング的な意味は特にありません。しかし、是非「力試し」として、自分がどれくらいの速さで英文を読めるのか実感してください。あまりに英文が読めずに嫌気が差すかもしれません。でも、それを英語学習の原動力にできるかが鍵です。
「こんな難しい英文が、30分後にはこれがスラスラ読めるようになってるんだ」くらいのポジティブ思考で、精読と向き合いましょう。
また、この速読の段階で完璧に理解できてしまうようであれば、テキストのレベルが易しすぎます。そのような場合は、適宜難易度を調整する必要があります。あくまで精読は、繰り返し分析し、和訳や解説を読んでやっとわかるくらいのレベルが目安です。
②そして精読(辞書なし)をしてみる。
ここからがいよいよ本格的な精読です。
まずは辞書なしで、多少苦しいとは思いますが、できる限り自分の力を振り絞って英文解析をしてみてください。1回読んだだけではわからなかったところも、2回3回と読んでいく内に理解できる幅が広がってくるものです。
自分の力の限界が見えるまで、難しい英文と向き合いながら力を尽くしてみてください。辞書を使うのは、あくまで自力を出し切ってからです。実際に英語を使うときというのは、手元に辞書を置けないのが普通です。そんなことも頭の片隅に置きながら、自力で精読を繰り返します。
ただ、わからないものといくらにらめっこをしても、それはそれで時間がいたずらに過ぎていくだけです。適度な頃合いを見計らって、次の段階に進むのも重要です。
③ここまでやってから精読(辞書あり)。
さて、自力で読めるところまで読んだら、ここで初めて辞書を手にします。
辞書に複数ある単語の意味から、文脈を考えて適切なものを選びます。品詞が何かもしっかりと確認していってください。
大抵ひとつの単語にも、たくさんの和訳が書いてあります。ですので、英語初心者にとっては、ここがふんばりどころかもしれません。
たくさんの訳の中から正確なものを選ぶには、英語上級者の方からのアドバイスが必要なときもあります。ただ、もし周りにそういう人がいないのであれば、そのわからなかった文章は例外として放置して構いません。いつかまた、時間が経って読んだとき、「何だこんな文章で手こずってたのか」と思えるようになるものです。
ただ、もしわからない箇所が続出するようであれば、テキストを易しめのものに変えた方が良いです。

さて、この段階で初めて辞書を使うわけですが、辞書がある分かなり理解力も上がるはずです。でも、もしかしたら完全に英文を理解できる程、教材が簡単でないかもしれません。
この段階で理解できない部分については、単語の意味は全てわかっているわけですから、英文を読めない原因は単語力ではありません。知らない文法が使われているか、知っている文法が隠れているのに気づいていないことが、今目の前の英文を読めない原因ということになります。
言い換えるなら、ここが自分の英語力の「伸びしろ」であり、次の和訳の答えを参照する段階で知識を吸収するべきところです。
④和訳と解説を見ながら知識を吸収する。
辞書を使って精一杯の努力をして、何回も英文に目を通したけれど、もうこれ以上自力ではわからないというところで、解答の和訳と照らし合わせてみてください。
自分の考えていたものと違うところも長い英文の中にはチラホラとあるはずです。
もし自力でわからなかった場合は、自分よりも英語のできる先生などに質問をするか、文法書などを参考にしてみましょう。あるいは、初めから精読用の解説がついたテキストを使用するのもありです。
そこで何故その和訳になったのかが、正確な理屈で説明できるようになったのであれば、それが精読を通してあなたが得た大切な知識となります。
大事なことは、それが「どうしてそういう解釈になるのか」を理解することです。
お勧めの書籍
精読に使うテキストを選ぶには、英文を見て「自力で」理解することができるか、あるいは「解説を見て」理解できるものを使って精読をすることが大前提です。以下に、私がそれで使ってきたもの、お勧めの書籍などを紹介します。
【初級~中級】
・Penguin Readersやoxfordの語彙制限がされた本
・英検やTOEICなどのの長文問題集
【上級者】
・The Japan Timesの社説集
・天声人語の英訳版
・英字新聞や洋書など(生の英語教材)
・「英文解釈教室」
英字新聞や洋書などの生の英語教材に関しては、対訳などが一切ありませんので、生の英語に触れられるというメリットの反面、英語学習には不向きになる面もあります。
そのため、これら生の英語教材を使う際は、和訳などがなくとも自分は完全に理解できるレベルのものを使うことをオススメします。
※英文解釈教室
ここに番外編として、「英文解釈教室」について、さらっと紹介しておきます。
英文解釈教室は、簡素な解説しか書かれていませんが、そこらの新聞や洋書より、はるかに難解な英文が扱われている参考書です。内容が大分骨太ですので、英語に自信のある方は是非チャレンジしてみてください。