こんにちは。上田哲也 (@English09040) です。
今回は世界的ベストセラーであるGrammar in Useの「イギリス英語版」と「アメリカ英語版」の違いについて、具体的にかつ徹底的に解説していきます。
「イギリス英語版とアメリカ英語版」どちらが良いですか?
僕は普段からGrammar in Useの講座を開いているということもあり、このような質問を数えきれないほどいただきます。
ご自身が学びたい方を選んでいただければ大丈夫です!
一言で結論を言うならこのようになるのですが…もっと詳しく違いが知りたいという声にお答えして、今回はしっかり深堀してお話ししていきます。
Grammar in Useの購入を検討している方
イギリス英語とアメリカ英語の英文法の違いが気になる方
そんな方達に読んでいただきたい記事になっています。
この記事を最後まで読み終わる頃には、Grammar in Use でどちらのバージョンを買うべきかがわかり、イギリス英語とアメリカ英語の違いがはっきりわかるようになっているはずです。
もしGrammar in Useの全ての種類の違いを「ざっくり」知りたいという方は、こちらの記事をご参照ください。
【2023年版】Grammar in Use の種類と使い方・勉強法を徹底解説
目次
目次のちがい
まずはGrammar in Useのイギリス英語版とアメリカ英語版の「目次」を比較してみましょう。
ここでは、それぞれの Forth Editon (第4版) を比較していきます。
English Grammar in Use (イギリス英語版):145ユニット
Grammar in Use Intermediate (アメリカ英語版):142ユニット
ユニット数だけで見ると、イギリス英語が3ユニット分多いことがわかります。
何でユニット数が違うんだろう?
詳しくはこれから解説しますが、これはイギリス版に「現在完了形」や「needn’t」の単元が多く含まれているためです。
ですが、それ以外はほぼ同じ内容の目次になっています。
なんだ両方とも一緒か
実は細かい違いはもっとあります。
ですので、イギリス英語とアメリカ英語の違いをしっかり把握して、Grammar in Use のどちらを購入するか決めたいという方は、ここから先で解説をする違いについてしっかり理解していきましょう。
内容のちがい
さて、ここからは具体的な違いを見ていきます。
これからお話しする内容は、English Grammar in Use (イギリス英語版) のAppendix 7 (American English) を参考にしています。
現在完了形 vs 過去形
まず一つ目の違いです。
イギリス英語:最近の出来事には「現在完了形」をよく使う
アメリカ英語:最近の出来事には「過去形」をよく使う
英語で「直近の過去」の話をするときは、過去形も現在完了形も使うことができます。しかし、イギリス英語とアメリカ英語では、若干傾向が違います。
ただでさえ現在完了形が苦手なのに…
そんな風に感じる方もいらっしゃるかと思いますが、多くの場合大きく意味は変わらないので大丈夫です。
ただし、大昔の話の話をするときは「過去形」を使います。
もしもっと詳しく「現在完了形」について学びたいという方は、ぜひGrammar in Useで実際に解説を読んだり問題を解きながら、理解を深めていってください。
また僕が開講しているGrammar in Use講座については、こちらをご確認ください。
【講座概要】英文法 × コーチング
どちらでも通じる。
“have” vs “take”
次に have か take かという問題です。
イギリス英語:have a bath / have a break が一般的。
アメリカ英語:take a bath / take a break が一般的。
ただし、どちらの動詞を使っても意味は通じます。
また、アメリカ版 Grammar in Use にも have a vacation が載っているので、そこまで気にしなくて大丈夫だと個人的には思います。
どちらでも通じる。
“shall” vs “will”
これはかなりイギリス英語の特徴がでるところですが…
イギリス英語:will も shall も使う
アメリカ英語:will は使うが shall はあまり使わない
アメリカ英語で “shall” って使わないの?
アメリカ英語でshallを使うシーンは多くありません。”Shall we?” などの呼びかけなどで使われますが、イギリスほど頻度は高くない印象です。
Ex: I shall be late this evening.
Ex: I will be late this evening.
English Grammar in Use (4th Edition)より引用
どちらでも通じる。でも違いは知っておいた方が良い。
“can’t” vs “must not”
英語の助動詞canとmustは否定文で使うと、どちらも「可能性が無い = そんなことはありえない」といったニュアンスを表現できます。
英語の助動詞 can と must は否定文で使うと、どちらも「可能性が無い = そんなことはありえない」といったニュアンスを表現できます。
イギリス英語:可能性が低い時 can’t を使う
アメリカ英語:可能性が低い時 must not を使う
ですが、イギリスでは can’t を、アメリカ英語では must not を使う傾向があるようです。
Ex: Sarah hasn’t contacted me. She can’t have got my message.
Ex: Sarah hasn’t contacted me. She must not have gotten my message.
English Grammar in Use (4th Edition)より引用
can’tとmust notの使い分けなんて考えたこともなかった
もしかしたら、こんな風に不安に感じる方もいるかと思いますが、どちらを使っても正確に意味は通じるので大丈夫です。
どちらでも通じる
“needn’t” vs “don’t need to”
これはかなり大きな違いです。
need は通常「一般動詞」として使われますが、イギリス英語では need が「助動詞」として使われることもあります。
イギリス英語:needn’tを使う
アメリカ英語:needn’tを使わない
“needn’t” なんて初めて見た
おそらくほとんどの方にとって、”neendn’t” は見慣れないものかと思います。
ちなみにアメリカ英語では、”don’t need to” と表現するのが普通です。
Ex: We needn’t hurry.
Ex: We don’t need to hurry.
English Grammar in Use (4th Edition)より引用
正直僕自身、普段アメリカ英語を読んだり聞いたりすることが多いので、needn’t は未だに慣れません…。
基本的に don’t need to… が無難。でもneedn’tも覚えておいた方が良い。
仮定法現在
仮定法現在って何??
…と思われるかもしれませんが、後で詳しく解説しますのでご安心ください。
イギリス英語:insist や demand の後に “should” を使う
アメリカ英語:insist や demand の後に “should” を使わない
これは個人的に、先ほどの needn’t に次いで、2番目に大きな違いだと思っています。
Ex: I insisted that he should apologise.
Ex: I insisted that he apologize.
English Grammar in Use (4th Edition)より引用
こちらの例文の通り、イギリス英語では should がつきます。
一方でアメリカ英語ではshouldがついていません。
apologize に3単現のsが無いのは何で?
これは「仮定法現在」と言われる文法で、3単現のsがつかないのがポイントです。
基本的にshouldを使っていれば問題無いのですが、読んだり聞いたりするときに理解できるよう「仮定法現在」を知っておくと良いです。
ただ実際には、この文法を知らなくても、意味の理解を妨げることはほとんどないので、最初のうちは気にしなくて大丈夫です。
どちらでも通じる。でも「仮定法現在」は知っておいた方が良い。
“Isn’t she?” vs “She isn’t?”
リアクションの仕方も、イギリス英語とアメリカ英語で少しだけ違います。
イギリス英語:Isn’t she?
アメリカ英語:She isn’t?
このように、アメリカ英語とイギリス英語で語順が異なります。
A: Lisa isn’t very well today.
B: Isn’t she? What’s wrong with her?
イギリス英語ではこのようになりますが…
A: Lisa isn’t very well today.
B: She isn’t? What’s wrong with her?
アメリカ英語ではこのようになります。
どちらでも通じる。
可算 vs 不可算
イギリス英語でもアメリカ英語でも、可算・不可算の考え方は一緒です。
ですが、accommodation に限って、若干の違いがあります。
イギリス英語:accommodation は不可算名詞
アメリカ英語:acoommodation は可算名詞になることもある
可算・不可算ただでさえ苦手なのに…
正直、日本人にとって可算・不可算は最難関です。なので、これから英文法を勉強しようとする人が、この単語一つとり上げて、イギリス英語とアメリカ英語の違いを気にかける必要はありません。
「Grammar in Useはもう完璧」と言えるようになってから、細かい例外は覚えていきましょう。
基本的には可算・不可算の認識は共通。
the のあるなし
可算・不可算の次は、冠詞の有無です。
イギリス英語:to/in the hospital
アメリカ英語:to/in hospital
theがつくつかないも難しいんだよな…
繰り返しになりますが、冠詞も日本人にとっては最難関です。
たった一つの例外のhospitalの冠詞の有無を気にするより、基本的な用法を身につける方が100倍優先度が高いです。
細かいことは気にしすぎず、優先度の高いところから、しっかり学んでいきましょう。
大きな差では無いので、まずは冠詞の基本用法をおさえる。
集合名詞
次に「集合名詞」の扱いの違いを見ていきましょう。
集合名詞って何?
「集合名詞」とは、複数のものが集まっている名詞のことです。
government や team や family などが代表的な例です。
ひとまとまりとして単数と捉えることがありますが、実際にはその中にたくさんの人がいるので複数扱いすることもあります。
そして、イギリス英語とアメリカ英語で、次のような違いがあります。
イギリス英語:government/team/family の後は is/are どちらも大丈夫
アメリカ英語:government/team/family の後は is が一般的
どちらでも通じる。
“at the weekend” vs “on the weekend”
イギリス英語とアメリカ英語では、前置詞・副詞の使い方が若干ちがいます。
その代表的な例のひとつがこちらです。
イギリス英語:at the weekend
アメリカ英語:on the weekend
正直僕はアメリカ英語にふれる機会が多いので、若干 at the weekend は違和感がありますが、意味に大きな影響は与えません。
どちらでも通じる。
“at the front/back” vs “in the front/back”
イギリス英語:at the front/back
アメリカ英語:in the front/back
なんだかイギリス英語は “at” を使うことが多いですね。
これも個人的には in the front/back を使いますが、どちらでも意味は十分通じます。
どちらでも通じる。
“different from/to” vs “different from/than”
さて、この前置詞は少し注意が必要です。
different は通常 “from” とセットですが、イギリス英語では “to”、アメリカ英語では “than” がつくことがあります。
イギリス英語:different from/to
アメリカ英語:different from/than
“different to” は初めて見ました
知っていればなんてことないのですが、特に “different to” は知らないとすぐに理解できないことがあるので要注意です。
両方知っておいた方が良い。
“round” vs “around”
どんどんいきましょう。
イギリス英語:round も around も使う
アメリカ英語:around を使う
どちらでも通じる。
fill in vs fill out
いよいよ前置詞・副詞シリーズラストです。
イギリス英語:fill in も fill out も大丈夫
アメリカ英語:fill out を使う
個人的な感覚ですが、日本人の方は “fill in” と “fill out” をセットで覚える人が多い気がするので、ここは問題ないかなと思ってます。
どちらでも通じる。
get on の使い方
ここからは句動詞の使い方です。
イギリス英語:get on (= progress) を使う
アメリカ英語:使わない
イギリスではget onをprogress (進める) という意味で使いますが、アメリカ英語ではそうは言いません。
Ex: How are you getting on in your new job?
English Grammar in Use (4th Edition)より引用
イギリス英語:get on with を使う
アメリカ英語:get along with を使う
またアメリカでは “get along with” (仲良くやる) という表現を使いますが、イギリス英語は “get on with” とも言います。
Ex: Richard gets on well with his new neighbours.
Ex: Richard gets along well with his new neighbors.
English Grammar in Use (4th Edition)より引用
両方の用法を覚えておいた方が良い。
do up の使い方
これも句動詞シリーズです。
これも知らないと、ちょっと理解するのが難しいかもしれません。
イギリス英語:do upを使う
アメリカ英語:fix upを使う
Ex: That old house looks great now that it has been done up.
Ex: That old house looks great now that it has been fixed up.
English Grammar in Use (4th Edition)より引用
両方の用法を覚えておいた方が良い。
過去形・過去分詞の変化
次に過去形と過去分詞の不規則変化です。
イギリス英語とアメリカ英語で少しだけ違うので、さらっと見ておきましょう。
イギリス英語:burn → burned/burnt (過去形)
アメリカ英語:burn → burned (過去形)
イギリス英語:spell → spelled/spelt (過去形)
アメリカ英語:spell → spelled (過去形)
イギリス英語:get → got (過去分詞)
アメリカ英語:get → gotten (過去分詞)
どちらでも通じる。
つづり
最後につづりを見ていきましょう。
こちらの例を見て分かる通り、イギリス英語ではLを重ねます。
イギリス英語:travel → travelling / travelled
アメリカ英語:travel → traveling / traveled
イギリス英語:cancel → cancelling / cancelled
アメリカ英語:cancel → canceling / canceled
Lの数なんて気にしたことなかった
正直、かなりしっかりスペルに注意を払っている人でないと気がつかないのでは…というレベルですので、最初のうちはあまり気にしなくて大丈夫です。
どちらでも通じる。
まとめ
ということで、今回は Grammar in Use における「アメリカ英語」と「イギリス英語」の違いについて解説してきました。
特にイギリス英語の助動詞 “needn’t” やアメリカ英語で使われる「仮定法現在」は、しっかり勉強したことがないと難しく感じると思います。
しかしそれ以外のユニットについては、「イギリス版」も「アメリカ版」もさほど違いはありません。
これは僕個人の経験ではありますが…僕は Grammar in Use のアメリカ版で英文法を一通り学び、イギリス英語の特徴は英語にふれる中で徐々に覚えていきました。そして結果的に、そのやり方で英文法に困ることはなくなりました。
ですので、みなさんが渡航する国や、馴染みのある英語を基準に、より自分にあった Grammar in Use を選んでみてください。